人気ブログランキング | 話題のタグを見る

愛蘭土の林檎の木の下で

granna.exblog.jp

夏の京都から

ここダブリンはすっかり秋、木の葉の色も紅葉し始めています。
でも、わたしと入れ違いに英国から京都へ戻った友人は、
京都の残暑に悲鳴を上げています。
今日の気温もまだ30度を超えるとか。
つい一週間前まで私もそこにいたのですが、もう遠い昔のことに
思えます。

日本にいる間は、やはりできるだけ日本らしい物が食べたくなります。
滞在中に食べた、そういうものを紹介します。

日本でしか食べられない新鮮な魚や豆腐、漬物、佃煮などはもちろんですが、
京都の和菓子はその美しさも素晴らしい。
夏の京都から_e0149801_221030.jpg

これは友人が買ってきてくれた幸楽屋さんの『金魚鉢』という冷菓。
金魚の目まできちんとついていて、完成までいったいどれだけの緻密な作業が
あるかと想像するだけですごい。
こんなこと和菓子職人さんしかできませんよね。
お味はというと、かなり甘めで一つ食べるのもきつかったですが、
十分に目で楽しませていただきました。
京都には老舗の虎屋にも金魚をかたどった『錦玉羹』という季節菓子があるそうです。
ネットで見るだけでも、こちらはさらに素晴らしい完成度です。


これは日本の秋の味覚、さんまの刺し身。ピカピカ銀色に光っています。
お盆開けに丹後の間人の魚屋さんに出ていて、思わず買ってしまいました。
さんまはアイルランドでは食べられないし、ましてや刺身にできるほど
新鮮なさんまなんて、京都でもなかなかありませんからね。
生姜がなかったのは残念でしたが,脂が口の中でとろけるようで、
冷えたビールをお供に、秋の味覚を堪能しました。
夏の京都から_e0149801_2212865.jpg


夏の京都から_e0149801_2282485.jpg
さて、写真ではこれが何なのか、分かりにくいと思いますが、
「きごしょうの佃煮」と言ってもご存じない方が多いかもしれません。
「きごしょう」とは葉唐辛子のこと。
京都ではお盆開け頃から9月にかけて、ほぼ収穫が終わった唐辛子を
根こそぎ引っこ抜いたのが出回ります。
葉っぱだけを集めて袋詰めしたのもありますが、たいていはそのままで売っています。
私が見つけたのは、軒先で野菜を売っていらっしゃる地の農家さんのお家。
なつかしさのあまり、あと先考えずに思わず買ってしまいました。
でも買ったら最後、面倒な作業が待っています。

まず高さ1メートル程ある唐辛子の木から葉っぱをちぎって集めます。
まだ小さい唐辛子の実もたくさん残っていますが、それも一緒に。
子どもの頃は、この作業を母にやらされました。
葉っぱをちぎる指が、ほんのり唐辛子の匂いに染まります。

次は堅そうな葉っぱをのぞいてよく洗い、熱湯でさっとゆがいてあくを抜きます。
ちょっと水に放してぎゅっと絞り、ザクザクと粗く刻んで、醤油と酒を
加えただし汁でコトコトと炊きます。
私は、濃いめの味付けで佃煮にしてしまうより、薄味でさっと煮て、
まだ緑が残るくらいのほうが好きです。
最後に頂き物のちりめん山椒を加えて、きごしょうそのもののほんのりした
苦みを味わいます。
ああ、これこそ夏の、そして京都の味。
白いご飯にのせれば、あとは何も要りません。
それにしても、収穫が終わったあとの葉っぱまで食べる、京都人の始末と
食い気の感性には感心させられます。

今まで気にしたことなかったのですが、「きごしょう」って「木胡椒」と
書くんですよね。
「胡椒」は「柚子胡椒」と同じで唐辛子のことを指してるのだと、
今年初めて気がつきました。
「葉唐辛子」と呼ぶこともありますが、やっぱりきごしょうのほうが
風情があっていいですね。
夏の京都の暑さは大変でしたが、こんなふうに、この季節こその味もあり、
そういう意味では夏も悪くないと思うのでした。
by happytable-eire | 2011-09-16 23:59 | ・Japanese