愛蘭土の林檎の木の下で

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アイルランドの昆布

日本料理のワークショップのための色々な試行錯誤の中で、
特に最近は、日本料理の鍵である旨味について知ってもらうことを、
いつも考えています。
その中で、アイルランドで和食を手軽に作るには、
昆布を料理にうまく生かすことだと思い至りました。

日本料理に欠かせない出しをとるための材料、特に鰹節は、
アイルランドでは手に入りにくく、あってもとても高いし、
業務用の大きな袋入りは割安ですが、一般家庭で使うには
量が多過ぎます。
アジアマーケットで小分けしてあるのを買った時は、
ちょっと酸化気味で、質もよくありませんでした。
ただでさえなじみがない上に、入手しにくい食材が必要だとなると、
それだけで日本料理のハードルが高くなってしまいます。

この8月に開催した、ベジタリアン料理教室のために、
昆布の使い方をリサーチする中で、とてもいい情報を得ました。
だし昆布を細切りにして水に浸けておくだけで、旨味たっぷりの
おいしい出しが取れるということ。
大阪の昆布会社社長の喜多條さんという方が、その方法で
取った出しを「昆布水」として、テレビなどのメディアで大々的に
広めていらっしゃるのです。

昆布の旨味は表面ではなく、切り口から出るのだから、
昆布をはじめから細く切って水につけておけばいいという、
とてもシンプルなのに革新的な発想を商品化され、
1ミリ幅に切った昆布を『昆布革命』という名で販売されています。
刻み昆布のような感じですが、こちらは上等のだし昆布を
刻んであるので、出る旨味が違うそうです。
このアイディアを拝借して、私もこの方法で取る昆布だしを
こちらでも教えるようになりました。

これまでは日本料理のクラスでは、伝統的な出しの取り方を
指導してきましたが、使う昆布によっては十分な旨味が出ず、
うっかり煮立ててしまうと昆布の臭みが出ることがあります。
出しを取った後の昆布ももったいなくて、かといって、
出し殻の利用まで指導するのはなかなかでした。
また、日本料理を作る度に出しを取ることから始めるというだけで、
面倒に思われてしまいがち。
でも、昆布水を冷蔵庫に入れておけば、いつでも使いたい時に
必要なだけ使うことができます。
この昆布水、意外なことに、煮て取る昆布だしよりも、
ずっと日持ちもするそうです。
実際、1週間以上置いても、悪くなったことはありません。
少量を和え物やお浸しに使うのも、ずっと手軽ですし、
細く切ってあるので、出し殻の昆布も料理に利用しやすい
利点も大きいです。

昆布は、こちらでもたいていのヘルスショップで買えるし、
スーパーマーケットでも置く店が出てきました。
でも、昆布は20年近く前にダブリンに住んでいた時にも、
買うことができたんです。
というのは、アイルランドの西海岸では、昆布をはじめ、
さまざまな海草が収穫できるからでしょう。

日本料理を作るにも、できるだけ現地の食材を使うのが、
私のモットーとするところ。
リサーチのために、こちらのメーカーの昆布を買っては、
出しをとって味を確かめてみています。
ただ、残念なことに、品質は日本のものより劣ります。
日本でも昆布の種類やランクでピンからキリまでありますが、
こちらのは旨味に欠けたり、苦みがあったり、塩分が強かったり、
また海草の強いくせを感じることもあります。
でも水に浸けておくだけなら、手軽なだけでなく、臭みが出にくく、
アイルランド産の昆布でも、まあまあ旨味が出ます。

先週末、ダブリンのRDSで開催していた『Your Health』という、
いわゆる健康食品の見本市のようなイベントに行ってきました。
かなりの数の健康に関する製品のブースが出ていましたし、
料理デモやセミナーもいろいろと企画されていました。
でも、何よりの目的は、Sea weedメーカーのリサーチでした。
その中で、一つの海草製品のメーカー"Wild Irish Sea Veg"の方と
お話することもできました。
このメーカーは、多品種の乾燥した海草に加えて、
粉末状にしたものも販売しておられます。
これがけっこう使いやすいです。

日本の昆布の製品過程の技術を導入することによって、
アイルランド産昆布の品質を向上させられないだろうかと、
以前から考えていました。
アイルランドにとって、海草は大きな海洋資源のひとつですし、
日本の食文化に欠かせない昆布の日本への輸出が実現すれば,
アイルランドにとっても大きなビジネスチャンスなのではないかと
思うのです。
折しも、今年は日本の昆布の生産高が史上最低だったとか。

私が考えているアイルランド産の昆布の品質向上に関して、
喜多條さんにアドバイスをいただけないかと相談させてもらったところ、
たいへん興味を持っていただきました。
それで、先日、こちらの昆布をお送りして、見ていただいています。

アイルランドと日本を繋ぐ橋渡しとして、何かお役に立てれば、
私にとってもうれしいことです。
このアイルランド産昆布のことについては、今後も経過を
書いていきますね。

なお、昆布水を考案された喜多條さんは、お料理がお得意で、
昆布水を使ったレシピ本も何冊も出していらっしゃいます。
日本の食文化の中でも重要な昆布の普及に、情熱を持って
取り組んでおられる姿には刺激を受けます。
私もアイルランドでの昆布の普及に一役買いたいものです。
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by happytable-eire | 2013-09-25 23:59 | ・Japanese | Comments(4)

Pork & Blackberries

先週の日曜日には、3つ前の記事で書いた、Electric Picnicでの
フードイベントで、発酵をテーマに甘酒紹介のデモを
させていただきました。
この件についてはまた後日、書きたいと思いますが、
前2つの記事に続けて、ついでにもう一つブラックベリーの料理を。

先々週の週末にはウェストコークに行っていたわけですが、
実はまた急用ができて、1週間後にもう一度行くことになりました。
Electric Picnicの会場が、ウェストコークへの途中だったのもあり、
イベント終了後に足をのばしたわけです。

兄と夫が用事をしている間、私は兄の家で留守番。
夕食の準備だけを引き受けました。
私の大好きなカントリースタイルのキッチンを、
自由に使えるのですから、何とも幸せな時間。
夕食だけでなく、パンを焼いてみたり、ジャムを煮てみたり。
家を一歩出れば、一週間ですっかり熟れたブラックベリーを
山のように摘むことができたのですから。

また兄の家では、うちでは見られないフード系のチャンネルも
いろいろ見られ、それこそ一日中でも料理番組が楽しめます。
何となく見ていた番組がNigel Slaterの『Dish of the Day』。
Nigel Slaterの番組は、一年に2シーズンくらいはBBCで
放送されるほど人気があります。
彼は料理人として働いていた経験もあるようですが、
どちらかというとフードライターとして有名になった人。
彼の料理は至ってシンプルですが、基本がきちんとしていて、
食材の食感や香りを大切にする、感覚的なところが好きです。
盛り付けには凝らないけれど、どこか繊細なセンスを感じます。
本は一冊、『The Kitchen Diary』しか持っていませんが、
こちらではBBCの映像で見られるのがうれしいです。

そんな彼の番組で、なんともタイムリーな料理が紹介されました。
ポークの塊をブラックベリーでマリネしてローストする料理です。
それをうちで試してみるために、ブラックベリーをたくさん摘んで
持って帰って来ました。

作り方はとにかくシンプル。
ブラックベリーを手でぐちゃぐちゃと潰して、その中に豚肉の塊を
漬け込んで冷蔵庫で一晩寝かせます。
番組では肩ロースが使われていましたが、ちょうど三枚肉の塊が
あったので、それを使いました。
この豚も、以前に紹介した、ウェストコークのDrimoleagueという街の
お肉屋さんのもの。

ブラックベリーは600gほど使いました。けっこうな量です。
手で潰すと手が真っ黒になってしまうので、ジップロックに入れて、
ビニールの上から揉んでブラックベリーを潰します。
そこへ豚を入れるだけ。果実以外は何も加えません。
肉が皮付きだったので、皮は果汁に漬からないように、
皮を上にして漬け込みました。
皮は乾燥している方が、カリッと焼き上がるからです。

そして一日置いて出してみたところ、肉が紫色に染まり、
とてもじゃないけれど、食欲をそそるとはいえません。
皮にはしっかり塩をすり込んで、肉にも塩、胡椒。
焼き皿に豚肉と残っている果汁もすべて入れて、オーブンへ。
番組では160℃でローストしていましたが、私は85℃くらいに
設定して、低温長時間ローストにすることにしました。
これは兄から教わった方法で、しっとりとジューシーに
仕上がります。
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そしてローストすること約6時間、一旦取り出して、
最後に温度を上げて、皮をカリッカリに焼き上げます。
焦がしたくないので、残ったブラックベリーの実は先に
取り出しておきました。
そして20分ほどすると、皮が見るからにカリッカリに。

天板に残ったブラックベリーはきれいにこそげ、ストックと
小麦粉を加えてとろみをつけたグレービーに仕上げます。
グレービーも当然、紫色。。。

付け合わせはパープルケール、人参、そしてこれもカリッと
仕上げたローストポテト。あ、アップルソースも忘れずに。

豚肉がしっとり柔らかいのは、ブラックベリーに含まれる
酵素が働いたに違いありません。
またほのかな酸味と、ブラックベリー独特の香りも残り、
豚バラ肉なのに、脂っぽさもなく、さっぱり。
この夏の恵をたっぷり吸った、何とも贅沢な一品です。
といっても、ブラックベリーはただですけどね。

この夏3ヶ月以上を日本で過ごした息子が帰って来たばかりで、
久々のロースト料理を堪能していました。
あ、そうそう、この料理には赤ワインです。
ブラックベリーを使っているせいか、特に赤ワインが
よく合いました。

ブラックベリーが簡単に手に入るアイルランド在住の方には、
ぜひ試して欲しい料理です。
ブラックベリーはまさに今が旬。
この時期しか楽しめない料理ですから。
ちなみにレシピはこちらをご参考ください。
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by happytable-eire | 2013-09-10 23:59 | ・Irish and others | Comments(4)